黒川博行「勁草」を読んだ
黒川博行「勁草」を読んだ。振り込め詐欺をテーマにした小説である。
これまで黒川博行氏の本は気になっていたものの、なかなか読む機会がなかったのだが、いやあ、面白いですなあ。
ほとんど会話で進行していく
読み始めてすぐに思ったのは、物語のほとんどが会話で進行していくことだ。
状況説明も最低限で、おおざっぱにいえば「台本みたいなつくり」なのだが、ワタクシがこのブログでたびたび書いている「悪い意味での台本みたいな小説」とは違った感じだ。
従来の小説が「会話以外の部分」でやっていたことを、会話に溶け込ませているのだろう。計算してやっているのか、自然にそうなっているのかはわからないが、なんだか不思議な作家だなあと思った。
会話
日本は映画でもドラマでも、とにかくセリフが多い。ほぼセリフと顔で語らせていると言ってもいいかもしれない。で、それらには、ほぼその言葉や表情以上の意味はなく、きわめて明瞭だ。
黒川博行氏の本を読んで思ったのは、ある意味、これが日本の小説のスタイルなのかもしれないなあということだった。
説明台詞もここまでくれば、成り立ってしまうのだなあ。いろいろと楽しい読書でございました。