戦慄のノンフィクション「子供たちは森に消えた」
「子供たちは森に消えた」を読んだ。
犠牲になった少年少女は50人以上―ロシアで実際に起こった猟奇殺人事件について書かれた戦慄のノンフィクションだ。
先日、このブログで紹介した小説「チャイルド44」の元ネタになった事件でもある。
子供たちは森に消えた
まずは「BOOK」データベースより紹介文を引用してみよう。
1982年、体制の崩壊を目前にしたソヴィエト連邦ロシア南部の森で、ナイフの傷跡も無残な少女の死体が発見された。それを皮切りに次次と森で子供たちが惨殺される事件が発生し、担当の捜査官ブラコフは、精神科医の協力を得つつ連続殺人犯を追う。そして1990年、ついに逮捕された男は、恐るべき事件の全貌を語り始めた…8年間に50人以上の少年少女の命を奪った異常殺人者の素顔に迫る、戦慄の犯罪心理ノンフィクション。
この作品は非常に強烈だ。
1982年~1990年にかけて次々と少年少女が殺されていくのだが、恐ろしいことに、最後の最後まで犯人の姿がまったくみえてこない。
手がかりらしい手がかりはナシ、どれだけ大規模な捜査をしてもまったく浮かび上がってこない。
犯人を誘い出すための罠を仕掛ければ、その盲点をついて殺人を犯す―これが現実にあったことなのかと思わされる恐ろしさがある。
捜査官側の視点
本作は、犯人を追う「捜査官側の視点」を中心に書かれている。
この書き方が実にハマッていて、犯人の得体の知れない恐ろしさや、捜査のあせり、現場の混乱っぷりが非常によく伝わってくる。
途中、唐突に写真が掲載されたページが出てくる。写真ページはその部分だけなのだが、これがゾッとさせる。
完成度の高いノンフィクション
この作品、多少「細かく書きすぎている」と感じさせる部分もあるが、「よくぞここまで書ききった」と思わされる内容だ。
この事件を題材にした「チャイルド44」は小説として面白かったが、読み物としてはこちらのほうが圧倒的に上ではないだろうか―そう思わされた。
翻訳も自然で読みやすいのもいい。興味のある人はぜひ読んでほしい1冊だ。