山は半分殺してちょうどいい―熊谷達也「相剋の森(そうこくのもり)」
熊谷達也「相剋の森(そうこくのもり)」を読んだ。
氏の作品では、「邂逅の森」「氷結の森」と並ぶ「森シリーズ」の1冊である。マタギ3部作ともよばれている。
時代的には「邂逅の森」よりだいぶ後の物語になるが、本としての発売は「相剋の森」のほうが早い。時代順、発売順のどちらで読んでもすんなりと入っていけるのがいいところだ。
相剋の森
「BOOK」データベースより「相剋の森」の紹介文を抜粋してみよう
「山は半分殺してちょうどいい―」現代の狩人であるマタギを取材していた編集者・美佐子は動物写真家の吉本から教えられたその言葉に衝撃を受ける。山を殺すとは何を意味するのか?人間はなぜ他の生き物を殺すのか?果たして自然との真の共生とは可能なのか―。
テーマとしては「邂逅の森」と同じく、人間と自然、生きるということに軸が置かれている。
ただ、こちらはフリーライターの女性が主役で、舞台も現代ということもあって、「邂逅の森」よりライトに読める部分がある。
こちらも非常に面白かったのだが、いくつか気になった点がある。
女性の描写が苦手か?
この作家は女性の描写が苦手かもしれない。「邂逅の森」でも薄々感じていたのだが、女性が主人公モノでそれがはっきりと出てしまった感じだ。
突拍子のない思考や行動がずいぶんと目立つのだ。「なぜその発想になる?」「何でそういうことをするかなあ?」というのが大変に多い。人間の言葉をしゃべるAIとでも言おうか、どうも血が通った感じがしないのである。
ウエンカムイの爪
この作品には、氏のデビュー作「ウエンカムイの爪」の人物も登場する。
未読でもたのしめるが、こうしたつながりは面白い。