talkingdoll

カメラとへんてこなものを愛するフリーランス。カメラ、映画、へんてこなどのネタをつぶやきます。

薬丸岳「神の子」

今回は、薬丸岳「神の子」について書いてみよう。

神の子(上) (光文社文庫)

以前、このブログで薬丸岳の小説を取り上げた時、こんなことを書いた。

薬丸岳氏の小説は、登場人物の数が少ないもののほうが圧倒的に出来がいい」

この作品は、まさにその逆である。

何か起こさなきゃ

薬丸岳氏の小説を読んでいて感じるのは、「何か起こさなきゃ」としすぎではないだろうかということである。

よく計算し、読者を飽きさせないように・・・というのは分かるのだが、どうにも「あせりすぎている」ように見えてしまうことがある。

この作品に関しても、読者の多くが求めているのは「主人公・町田博史の物語」だったのではないだろうか。

だが、途中からどんどんと登場人物が増えていき、それぞれに事件が起こり、「主人公・町田博史の物語」から離れていってしまう。

結局、何にスポットをあてた物語なのかわからなくなってしまった―そんな作品になってしまったように思う。

持ち味

神の子(下) (光文社文庫)

この作品は連載モノだったというのもあるだろう。読者に飽きさせないために、あるいは読者の反応によって、変えた部分もあるのだろう。

だが、それによって「その場その場で興味をひく」ことに終始した物語になってしまったように思う。結果、人の内面よりも行動を書くことがメインになり、ただの駒のような印象になる

またドラマチックなことを起こそうとして、漫画みたいな展開になってしまっているところも多い。

薬丸岳氏は、せまい世界でじっくりと人間を描いた作品のほうが持ち味が出る、そう思えてならない。

人物の名前

薬丸岳氏の小説には様々な人物が出てくるが、名前のネタ元を拾ってみるのも面白い。プロ野球、プロレス、漫画など、いろいろなところから名前のヒントを得ている印象だ。

 

神の子(上) (光文社文庫)

神の子(上) (光文社文庫)

 
神の子(下) (光文社文庫)

神の子(下) (光文社文庫)

 

 

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