薬丸岳「Aではない君と」
今日は「Aではない君と」を紹介しよう。薬丸岳氏の小説である。
薬丸岳氏は少年犯罪をテーマに書かせたら、右に出るものがいない作家と言ってもいいだろう。氏の作品の中で、このテーマで書かれたものにはハズレがない。
問題提起ではなく、心と心のドラマ
薬丸岳氏の小説は、基本的にはヒューマンドラマだ。
テーマは少年犯罪だが、それに関係した人たちそれぞれの心の葛藤を描いていくというスタイルだ。なので、少年犯罪自体に興味がなくても、非常に読み応えのある作品になっている。
この作品は、息子が殺人容疑で逮捕された・・・その父親の視点を中心に描かれている。
バランスのいい作品
薬丸岳氏は、登場人物が少ないもののほうが圧倒的に出来がいい。ストーリーを転がすよりも、内面を描くのに長けているからだろう、この作品もそのタイプだ。
文章はシンプルだが、じっくりと読ませてくれる、考えさせてくれる作家だ。興味のある人はぜひ読んでほしい。