塩田武士「罪の声」 その2
昨日の記事、塩田武士「罪の声」話のつづきである。
行動の動機が薄い
この作品、人物が「なぜその行動をするのか」がよくわからない。
指示されたり、思い立ったりして、動くのだが「なぜなのか」の描写がほとんどないのである。
たとえば、事件に関連がありそうな人物にあたって、話をする場面がある。
で、最初の会話で軽く否定されただけで、「完全な空振りに終わった」とがっくりするのだが、いやいや、そこで終わるなよ!という話である。
「でも、怪しい」とか「その話を信じる理由」とかも一切ない。しかも、わざわざ海外にまで行ってるんだぜ。
で、
取材メモに何て書けばいいのか。それより鳥居にどう言い訳すればいいのか。
となるのだが、「なぜこういう思考になるのか」という話である。この言葉の裏を取ったり、この人物について調べることも、情報元を再度当たると言ったこともない。
そのまま帰国するのだからすごい話である。
筆力・・・なのか?
「筆力がある」という言葉がある。
たまに、この本のように「長い文章を書く作家」に対して使われることもあるが、ワタクシはそりゃあ意味が違うだろうと思ってしまう。
ワタクシは、最低限のことしか書いていない「台本みたいな小説」はいかがなものかと思うが、この本に関してはその最低限の部分、「伝えるべき情報」が余計な文章で埋もれてしまっているように思う。
要は、「誰が何のために何をした」がはっきりしていないのに、余計な装飾だけを頑張ってしまった・・・そんな印象を受ける。
おそらく、もともとの設定や構成自体に問題があるのではないかと思う。
次回につづく