実際に起こった事件をモチーフにした作品について
先日、「タイムリーな話題に乗っかれ」とばかりに、実際に起こった事件を安直にモチーフにしたミステリはいかがなものかと書いた。
今回は、その件についてもう少し詳しく書いてみよう。
実際に起こった事件をモチーフにする
こうした類のミステリでワタクシが「ん?」と思ってしまうのは、安直なものが多いように思うからだ。それなりの覚悟を持って書かれているものはこの類ではないことを先に言っておこう。
なんというか、実際の事件をモチーフにする場合は「舞台設定だけもらいました」「私なりの推理をしました」というのはどうかと思ってしまうのだ。まんま事件をなぞっておいて、お粗末な出来だといかがなものかと思うのはワタクシだけだろうか。
このブログでも取り上げたことのある「震える牛」や「ガラパゴス」は、多少の工夫がされている分、まだマシなほうかもしれないが、ワタクシはこの類の小説だと思っている。
これは宣伝方法や売り方にも問題があると思うが、これを「社会派」というのはいかがなものだろうか。社会派と銘打つのならば、もう少し骨がある作品であってほしいものだ。
何をどう書くか
事件でなくとも、「乗っかれ」とばかりに話題の要素を盛り込んだ作品は多い。古い作品になるが柚月裕子の「臨床真理」はなかなか強烈だ。
本としてはそれなりの面白さはあるが、ワタクシは「これは『作品」なのだろうか」と思ってしまった。
この小説では、目をひきやすいテーマがいくつも用いられているが、その分野についてさほど詳しくなくても「?」という部分が多いのだ。それも、基本的な部分であり「少し調べれば分かるだろう」という部分だったりもするのだ。
創作ではあるが、どこまでウソをつくかには、守るべきところがしっかりとしての話。リアルな部分があって、ウソが生きるのだ。これはファンタジーでもSFでもそうだ。だが、この作品はそれができていないように思う。
デリケートな問題を取り上げるのであればなおさらだ。安直な娯楽にするのであれば「そのテーマに手を出すべきではない」とワタクシは思う。