謎の生物ものの難しさと「ダスク・オブ・ザ・デッド」
ワタクシは、できるだけ前情報を入れずに映画を選んでいるが、見るのを迷うタイプの映画がある。
それは、謎の生物ものの映画だ。これは非常に難しいところだ。
謎の生物ものをどう見せるか
謎の生物ものは出来のいいものとそうでないものの差が激しい。つくりがチャチだとかそういうことではなく、ひとえに「謎の生物をどう見せるか」につきる。
こういう系統は、「謎の生物のシーン」さえしっかりしていればいいというわけではなく、そこまでの展開をいかに見せるかがポイントだとワタクシは思っている。
プロレスのフィニッシュホールドにつなぐ展開に近いところがある。フィニッシュに説得力のある流れをいかにつくるか、それができれば見た目が派手な技でなくともフィニッシュホールドになる。ニック・ボックウィンクルのレスリングは大変に美しい。
邦画は非常に弱い
邦画はこうした点が非常に弱い。これは日本の風潮なのかもしれないが「ここまで作ったんだぜ、このCGをじっくりと堪能してくれ!」という押し付け的な見せ方が多い。
三丁目の夕日なんかでも、そこまで見せる必要がないだろうぐらいに街並みのCGを映したり、怪物モノなんかは言わずもがな。「僕たちの技術」の発表会である。そういうのは雑誌とかWEBでやればいい話である。
ダスク・オブ・ザ・デッド
そんなわけで、今回取り上げるのは「ダスク・オブ・ザ・デッド」である。
見るからにB級っぽい雰囲気だが、実際見てみるとかなりよくできた映画だ。謎の生物が出てくるまでの雰囲気が抜群で、謎の生物の見せ方も本当にうまい。っていうか、めちゃくちゃにドキドキする。存在感の見せ方がうますぎるのだ。
予告だけでは伝わりにくいかもしれないが、この映画は空気感の作り方が本当に素晴らしい。映画自体は、登場人物が数人だけ、話もほぼ1か所だけで展開するという低予算映画なのだが、その分を知恵と工夫で完璧に補っている。
DVDには、特典としてメイキングが入っているが、これを見ると知恵と工夫でここまでできるものかと驚かされる。ワタクシはトゲトゲゾンビのアイデアに涙が出そうになった。CGに頼らないからこそ生まれた知恵である。気になる人はぜひ見てほしい。作品自体も素晴らしいが、メイキングも必見だ。
この作品は「~ザ・デッド」というタイトルが流行った頃につけられた邦題でパッケージを含めて、ラーメンで言うところの「またおま系」に近い感覚にもなるが、原題は全然違う。もとのタイトルは「SPLINTER」である(日本版のタイトルにも副題のように書かれているが、同みてもダスク・オブ・ザ・デッドのほう目がいってしまう)。こちらのほうが合っている。
まさに掘り出し物感が味わえる映画だ。